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体験談・エッセイ

【体験談】思春期の連れ子娘とサシでご飯に行った日のこと

【体験談】思春期の連れ子娘とサシでご飯に行った日のこと
「絶対に口をきかない」「視線も合わせない」。そんな氷河期のような思春期真っ只中のステップドーター(高校生の娘)と、ひょんなことから二人きりで夕食に行くことになったステップファザーの、緊張と感動の体験談エッセイです。

ステップファミリーにおいて、「思春期の女の子の連れ子」と「大人の男性(継父)」という組み合わせは、おそらく宇宙で最も心理的な距離が遠い関係性と言っても過言ではありません。

今回は、高校2年生の連れ子(娘)を持つステップファザー(Sさん・40代)が体験した、心温まる一夜のエピソードをご紹介します。


氷河期のステップドーター

私と妻が再婚したのは、娘が中学2年生の時でした。 世間一般の思春期の女の子が実の父親を「ウザい」と避ける時期に、見知らぬ大人の男が家にやってきたわけですから、娘の拒絶反応は凄まじいものでした。

挨拶をしても完全無視。私が座った後のソファには絶対に座らない。私の洗濯物と一緒に洗われるのを嫌がり、自分で洗濯機を回す。 私は「これはもう仕方がないことだ。腫れ物に触るように、刺激しないように生きよう」と諦め、娘とは必要最低限(お年玉を渡す時くらい)しか接点を持たないまま、3年が過ぎました。


突然の「二人きりの夕食」

娘が高校2年生になったある冬の日。 妻が急な出張で夜遅くまで帰れなくなり、私と娘は数年ぶりに「家の中で二人きり」という絶望的な状況に取り残されました。

夕食はどうしようか。お金だけ置いて外で食べてきてもらおうか。 色々と悩んだ末、私は思い切って娘の部屋のドアをノックしました。「夕飯、どうする? ピザでも頼むか?」とドア越しに聞くと、数秒の沈黙の後、意外な返事が返ってきました。

「……焼肉、食べたい」

私は驚きました。まさかリクエストが来るとは。「じゃあ、駅前の焼肉屋に行くか」と言うと、娘は無言で部屋から出てきて、靴を履き始めました。


網を挟んでの沈黙と、ぽつりこぼした本音

焼肉屋に向かう道中も、席についてからも、見事なまでに会話はありませんでした。 私はひたすら肉を焼き、娘の皿に乗せるだけの「焼き肉マシン」に徹していました。娘もスマホをいじりながら、出された肉を黙々と食べていました。

「早く食べて帰りたいだろうな……」 そう思いながら私が網の上の肉をひっくり返していると、娘が突然スマホから目を離し、私を真っ直ぐ見て言いました。

「ねえ、お母さんのこと、幸せにしてくれてる?」

心臓が止まるかと思いました。3年間、ほとんど口をきいたことのない娘からの、あまりに真っ直ぐな問いかけでした。 私は一瞬たじろぎましたが、嘘をついてはいけないと思い、慎重に言葉を選びました。

「幸せにできているかは、お母さんに聞いてみないと分からないよ。でも、俺は君のお母さんと結婚して、本当に毎日幸せだと思ってる。それだけは間違いないよ」

娘はじっと私の目を見た後、小さく「ふーん」と鼻を鳴らし、またスマホに目を落としました。 そして、小さな声で呟いたのです。

「……お母さん、昔よく一人で泣いてたから。今は笑ってるから、まあいいんじゃない」


継父としての「合格発表」

その瞬間、私は「ああ、この子は母親のことが心配で、ずっと俺のことを観察し、品定めしていたんだな」と悟りました。

私自身に興味があったわけではなく、「大好きな母親を任せるに足る男かどうか」を、この3年間厳しい目でジャッジしていたのです。 そして今日のこの不器用な問いかけは、娘なりの「お前をお母さんの夫として認めてやる」という合格発表だったのだと思います。

「そっか。よかった」 私がそう言うと、娘は「あの肉焦げてる」と網を指差しました。

帰り道、相変わらず会話はありませんでしたが、少しだけ私の歩幅に合わせて歩く娘の姿が、今までよりもほんの少しだけ、家族のように見えました。 思春期の娘を持つステップファザーの皆さん。彼女たちは無視しているようで、実はあなたの一挙手一投足を、誰よりも真剣に見つめています。どうか焦らず、ただ「母親を大切にする男の背中」を見せ続けてあげてください。


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